【みんなのスマホ】吉本ばななさん(後編) 「読書はとても役立つツール、生きることが楽になる」

書いた人: モバレコ編集部

カテゴリ: スマホ ,

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【みんなのスマホ】吉本ばななさん(後編) 「読書はとても役立つツール、生きることが楽になる」

先週からスタートしたモバレコのインタビューシリーズ「みんなのスマホ」
今日は小説家・吉本ばななさんの後編をお届けいたします。

前編では、ばななさんがiPhoneとAndroidを使い比べて感じたことや、お子さんにガジェットを与えているときに気をつけていることなどを中心にお話をうかがいました。

<先週の記事>

吉本ばななさん(前編)「子どもにガジェットを与えても、様子を見ることは怠らない」

後編では、インターネットやSNSが普及して思うことや、紙と電子書籍の今後について、新書『おとなになるってどんなこと?』など、さまざまなテーマでインタビュー。

そして今回は、ばななさんのサイン本が抽選で当たるプレゼント企画もありますので、最後までお読みいただき、どしどしご応募いただけたらと思います!

※こちらのプレゼント企画は終了いたしました!たくさんご応募いただき、ありがとうございました。

目次:

ファンとのTwitter交流は、リアルタイムの良さ

吉本ばななさん

――ばななさんは作家活動をされてきて、ネットがない時代といまネットが普及している時代を仕事されてきましたが、大きな変化はどんなことを思いますか?

とにかく調べ物が楽になりました。以前は書店や図書館に行って資料を探したり、人に会って取材していたのを、いまではネットで調べればすぐ手に入るので大変ありがたい存在です。

――ネットで調べた情報などをいまでは小説に取り入れたりできるということですか?

はい、取り入れたりしていますね。

――ばななさんはTwitterでファンの方と交流されていますが、どのようなお気持ちでされているんですか?

SNSは、TwitterとFacebookとInstagramをやっていますが、ファンとの交流はTwitterだけに限定しています。それに限定している分だけ、本当に交流しているという感じです。

――Twitterで交流することでより読者との距離が近く感じるようになったとかありますか?

マメな人は昔からお手紙とか書いてくださっているので基本的には変わりないのですが、リアルタイムの交流の良さみたいなのは感じます。いま夜起きている人同士のやりとりなどは手紙ではできない交流ですね。

――ばななさんの小説『どんぐり姉妹』で主人公の姉妹は相談サイトを立ち上げて、顔の知らない人たちの悩みにメールを返信していくという仕事が出てきます。ネットコミュニケーションについてのテーマでお書きになられたのですか?

私が以前、自分のサイトで読者の質問に答えていくことを10年くらいやっていて、「こんな感じで相談に答える仕事をしている人が世の中にはいるんだろうな」と思って書き始めた気がします。あとはあまり外に出ないで仕事をしている人だったらどんな業種かなと思って設定したこともありますね。この小説では「サイトを運営している」というのが重要なテーマではなかったですが、韓国のネットサービスで私の読者とやり取りをするという仕事があったんです。質問事項ではなくて、メールを書いてくれたら返事をしますと募集をかけたんです。そのメールをセレクトした人も優秀だと思うのですが、その韓国の人たちからのメールが素晴らしくて・・・。

吉本ばななさん

――どんなところに感動したんですか?

生きている苦しみそのもの、みたいな文面だったんです。日本だと、ひと段階余裕がある振りをしてから書く、みたいなことが韓国の人たちにはないから本当に素晴らしいメールがいっぱいきちゃって感動しました。そのメールを読んでいるうちに「私は 『どんぐり姉妹』でこういうことを書いていたんだな」と後から思いました。

――素晴らしい本の感想をいただいたということですか?

いえ、本の感想はゼロです。悩みでもなく、吐露でもない、自分の存在というものを生の声で伝えてくる感じ。こういう文面は日本ではないと思いました。とにかくいろんな年齢の男女からメールをいただいたんです。いま韓国で生きているということとか、切実だけど重すぎる感じでもなくて心から感動しました。

――具体的にはどんなメールだったんですか?

例えば「初めて付き合った彼氏にばななさんの『キッチン』をプレゼントしてもらいました。でもその人はいま別の人と結婚していて幸せに暮らしています。私が理想と思っている愛はばななさんの『ハチ公最後の恋人』のような形なのですが、実際本当にそんな愛の形はこの世にあるのでしょうか?」とか、「私は30代中盤の女性です。最近ほんとうに孤独を感じています。私は結婚もしていません、彼氏もいません。手をつないで歩いているカップルを見ると寂しくなります。出かけるのも嫌になるくらいです。私はこのまま結婚もできないままずっと一人なのかなと思うと不安で仕方がありません」とか、「最近親しい知人から裏切られてとても耐えられない気持ちです。誰かに助けを求めようとしてもその出来事がトラウマになってうまく人と接することができません。大切に思っていた人からの裏切りをどうやったら克服できますでしょうか?」とか・・・。
日本人はここまで素直に書かないような気がします。

――そうですね、ここまで真っ直ぐに日本人は書かないです。もうちょっと取り繕うと思います

「~~ですかね?(笑)」みたいな書き方をしてくると思います。

――そのメールでやり取りをされて、韓国のイメージは変わりましたか?

いえ、道で見かける人たちの頭のなかは確かにこんな感じだなと思いました。海外の人たちは日本人と違って、まず自分はどんな人間なのかを絶対名乗ってくるんですよ。職業、年齢、どんな生き方をしているのか。日本人だと「こんにちは。私はBzが大好きな◯◯です!」とかぐらいなんだけど、海外の人は客観的にみて自分はどういうポジションでどういう状態にいま居るのか、自己紹介が厳密なんです。多分、いろんな国の人が住む環境にあるからでしょう。

ネットが普及したことは、メリットのほうが多い

――ネットが普及したことの良さと、時代が失ったものがあるとしたらどんなことですか?

失ったものはやはり「時間」ですね。ネットがあるとやっぱり何もかもが急かされます。
目の前の人との交流がしにくくなっているといわれているけど、昔も友達同士で喫茶店行ってもお互いに雑誌を読んだり別々のことをしていたのでそこは若い人を責められないです。

――具体的に息苦しいなと思う瞬間はどんな状況のときがありますか?

ショートメールやLINEとかじゃなくて、パソコンのメールで仕事先の人から「3時間前にメールを送ったけど、返信がないのでちゃんと届いてますか?」とか確認メールが来たときはちょっとおかしいと思うし息苦しい。それが2日くらい経ってからなら普通だと思うけど、3時間くらいで確認してくるのは心配になります。周りにその早さで返信を強いることは難しいんじゃないの、と思います。
「2日間経ってそれは返信が必要かどうか」という判断力が鈍っているんですね。投げっぱなしにしておいて問題ないメールだったのか、具体的な返事が来なくちゃいけないのかその都度判断しなくちゃいけないんだけど、そういうことができなくてなっている人を見るとこれは完全にもうネットが普及したよくない面で、いつでもすぐやり取りできると思い込みすぎてしまっている。
だけど、ネットが普及した悪い面より良い面のほうが多いと私は思います。

――良い面はどんなところでしょうか?

子どもとすぐ連絡が取れることとか。昔は学校に行っちゃったら連絡はもうどうすることもできなかった時代でした。現代は物騒さも昔より増しているから子どもと連絡が取り合えるのは本当にありがたい恩恵です。
あとは海外での待ち合わせにはすごく助かる。なんといっても外国の知らない土地で会うので、スマホがなかったら本当に大変ですよ。海外で友達と「○○デパートの1階で落ち合おう」と決めてたとしても、そのデパートが本館、別館、新館とか3つくらいあったりするじゃないですか。そういうとき昔だったらお互い行ったり来たりして本当に大変。だからネットが普及して本当によかった、いい時代になったなという思いのほうが大きいです。

――スマホを使うのが当たり前になっている10~20代の若い世代のコミュニケーションについては、どんなことを思いますか?

全員ではないけれど、順番がめちゃくちゃだなと思うことが多い感じです。「大から小に考えていけば分かるんじゃない?」とよく言うことがありますね。手元のことでいっぱいで、自分がいまなにをしているんだか分からなくちゃっている様子をよく見かけます。

――「大から小へ考える」とは具体的にはどんなことでしょうか? 進路の決め方とかですか?

進路とかそんな大きなことじゃないです。全部の考え方がそういうことになっているので。具体例となるとなんでしょうか・・・。
例えば、誰かと会うためにお店を予約するとします。その人は自分にとってどんな人なのか、今日はどんな目的で会うのか、「大きいこと」から考えていけばおのずと店のセレクトが決まってきます。親の誕生日をお祝いするという目的なら、親は辛い食べ物とか苦手だからエスニック系のお店を外せばいいのに、自分の行きつけだからとタイ料理屋に電話して「親のお祝いをしたいけど、親はタイ料理が苦手なんです・・・」と言って困らせるみたいな、簡単に説明するとそんな感じに順番がめちゃくちゃ。
もうひとつ挙げると、私がお客として居酒屋に入ろうと扉をあけたら、真っ先に「靴を脱いで入ってください!」とか言ってくるとか。まだ入ろうともしていないのに・・・(笑)。まずは「何名様ですか?」と聞くのがあなたの仕事じゃない? と新人バイトの若者を見て思います。席が空いているか確認しあわないとお客さんはいきなり靴を脱いだりしないって、大きい方から考えれば分かるのことなのにと。

――その考え方の修正って、できるようになるんでしょうか?

あるとき「あれ? これは逆に考えていったほうが楽だし早いぞ!」って気づくと思います。

読書はとても役立つツール、生きることが楽になる

――違うメディアでばななさんが、「いまの時代、読書というのは特別な人がする特別な習慣になってしまいました」と発言されているのを目にしました。ネットが普及したことで情報を得る手段が増えて本離れが進んだと私は思っているんですが、読書にはネットでは得られない力があるとしたらどんなことがありますか?

やはりプロが書いた文章と、素人が書いた文章にはとても大きな違いがあります。素人が書いた文章は他者に向けているという視点がありません。だからプロの書いた文章を読むということは「誰かが自分のことを思って書いてくれている」、そういったものを読んでいるといっても過言ではありません。どんなジャンルであってもプロの文章は他者へのサービスが含まれているので、そういうところにまず読書の価値があります。
それともうひとつ、読書というのは知らない人の人生をまるごと体験できることです。それと照らし合わせると自分の立ち位置みたいなのが分かってくることがあるので、私にとって読書はすごく役立つツール。だから若い人の読書離れはもったいないなと思います。
結局素人の文章は、素人である自分自身に向けて書いているので他者に対してシェアできる部分がほとんどありません。一見あるようなんだけど、やっぱりないんですよ。
「自分はこういう体験をした、これを書いたら誰かに役立つだろうか」と考えたプロの文章とは別物なので、時間がある若い時期に電子版でもかまわないからたくさん本を読んでおくといいと思います。きっと、生きることが楽になりますよ。

吉本ばななさん

――では、ばななさんが思春期に読んだ本で、大人になって役立ったなと思う本はなんですか?

サガンの小説です。子どものときはよく分からなかったけれど、大人になってから意味が分かるようになりました。フランス文学の特徴でもあるんですが、あえて幸福とか調和とかではないものを人間が選び取ってしまう心理とかが大人になってしみじみ分かった感じです。子どものときは「こんな大変なことになるって分かっててどうしてこっちを選ぶの?」と疑問だったんですが、大人になると分かる気がしてきて。

――そんな風に時間が熟成してきて意味が分かってくるというのも読書の醍醐味ですね。ところで電子書籍について伺いたいのですが、いま電子で販売される本の数も増加傾向で、ばななさんの作品も紙と電子の両方で販売されていますね。今後はどのように紙と電子の関係は変化していくと予想されますか?

紙の本は趣味的に出版される感じになって、いずれはほとんどが電子になっていくと思います。
CDから音楽配信みたいな変化の仕方はしないと思うけれど、レコードからCDへと移行していった時のような感じになると思います。ジャズマニアの方やDJのような一部のこだわりを持つような人がいるように、紙の本を買う人は少ないけれど残って、それにこだわらない大多数の人たちは電子で買っていくように予想しています。大きく減少していく可能性があるとしたら文庫の存在なのではないでしょうか。

――ばななさんの作品も電子の比率が増えている傾向ですか?

はい、着実に増えていますね。私も読書がほとんど電子になりました。

――電子で読まれるときはどんな端末をお使いになっているんですか?

Kindle Fireと、旅行のときはiPad miniです。紙の本を買う機会がとても減ってきました。私は小説用の資料として本を買って読むことがあるので、部屋のスペースが取られないというのが本当に楽です。紙より端末で読むほうが目が疲れるかなと思っていましたが、それほど差がないと私は体感しています。

――ばななさん初となる新書の本「おとなになるってどんなこと?」(ちくまプリマー新書刊)は、とくに若い人たちに向けて書かれた本だとおもいますが、どのような思いでつづられたのでしょうか?

最近の若い人たちって、兄弟やいとこ、親戚のおばさんとかそれほど頻繁にやり取りしている印象がなくて。している人はもちろんいますけど、そういう感じの大人からもらうアドバイスみたいな本がつくりたいと思い書きました。

『おとなになるってどんなこと?』(ちくまプリマー新書)
『おとなになるってどんなこと?』(ちくまプリマー新書)

――親ではない大人の言葉、だからこそ響くみたいな感じですか?

そう、ちょっと離れた距離の大人で、自分の思うところのやりたことをやって生きている人の話なら聞いてもいいかな、そんな風に思って読んでくれるように。

――私も拝読させていただきました。冒頭に書かれている「大人になんかならなくていい、自分自身になっていってください。それがみなさんの生まれてきた目的です」という言葉が目からうろこというか、とても感銘を受けました。読者からはどんな感想が届いていますか?

若い世代よりも、大人たちの反響が多かったです。「確かにこういうこと忘れていた」みたいな感想をいただきました。若い人たちは読んで、すんなり理解してくれるという感じが多いです。
「そうは言っても、できないよ!」とか言われませんでした。

――では最後の質問ですが、ばななさんは最近ペンネームも平仮名から漢字表記に戻されて、また新たな意識で作品を書かれるのかなと思っているのですが、今後のばななさんの方針などがあれば教えてください。

長編や連作が書ける時間というのが年齢的に考えてそうそう長くはないと思っているので、短編を文芸誌に発表してそれをまとめて一冊にするという仕事はしばらくやらない方針です。余裕があったら短編を書きますが、これから10年は長編に集中すると思います。

――長編と連作、楽しみにしています。今日はさまざまな視点からのお話、ありがとうございました。

こちらこそ、ありがとうございました。

吉本ばななさん

<プロフィール>
吉本ばなな(よしもと・ばなな)

1964年、東京生まれ。詩人・思想家の吉本隆明の次女。日本大学藝術学部文芸学科卒業。
87年小説『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。
著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアのスカンノ賞、フェンディッシメ文学賞、カプリ賞など受賞している。他の著作に『アルゼンチンババア』『デッドエンドの思い出』『鳥たち』『サーカスナイト』『ふなふな船橋』など多数。

<WEB>吉本ばなな公式サイト

フォロー&RTで、吉本ばななさんのサイン本をプレゼント!

『おとなになるってどんなこと?』(ちくまプリマー新書)

該当のツイートをRT(リツイート)してくださった方の中から、抽選で1名様に吉本ばななさんの新書『おとなになるってどんなこと?』のサイン本をプレゼントいたします。
応募方法は、以下の手順でお願いします。

1) モバレコの公式Twitterアカウント「@mobareco_jp」をフォローする。
2) 下記の対象のツイートをRT(リツイート)してください。

対象ツイートは、こちら

当選のご連絡はDM(ダイレクトメッセージ)でお送りいたしますので、モバレコの公式Twitterアカウント「@mobareco_jp」をフォローしていない人は対象外となりますので、お気をつけください。

応募期間は、11月10日15時までとなっています。
みなさまのご応募お待ちしております!!

※こちらのプレゼント企画は終了いたしました!たくさんご応募いただき、ありがとうございました。

(取材・文/勝俣利彦)
(撮影/天田輔)

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この記事を書いた人(編集:モバレコ編集部)

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