心がホッコリするKindle漫画!朝倉世界一の作品をさかのぼるロング・インタビュー

書いた人: モバレコ編集部

カテゴリ: インタビュー, レポート ,

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心がホッコリするKindle漫画!朝倉世界一の作品をさかのぼるロング・インタビュー

私が朝倉世界一さんの作品を初めて読んだのが『デボネア・ドライブ』。

漫画の帯文に吉本ばななさんが、「全てが私のツボにはまりすぎる。私のかけがえのなかった子供時代にひっぱっていってくれる。大好きすぎてゲロ吐きそうだ!」とコメントを書いていたり、江口寿史さんがこんなカッコイイ漫画最近見たことないと、賞賛されていたので、「そ、そんなに面白いの!?」と、買わずにはいられなかったことを覚えています。

そして、それは本当でした・・・!
本当に面白かったのです!!(吐かなかったけど!笑)

朝倉さんの作品をこれまで何度も読み返しています。
自分の心になんとなくコリが溜まったとき、朝倉作品は柔らかくほぐしてくれる気がします。
だからといって、説教っぽい台詞や教訓が散りばめられているということもありません。すべての作品に共通しているのは、「圧倒的なユルさ!」が描かれているのです。

ゲラゲラ笑うシーンもあり、ほろりときたり、じーんとなるシーンもあり。
日常の緊張をほぐしてくれる、まるでマッサージのような漫画。

そんな作品を数多く発表されている、朝倉世界一さん。
今回は、Kindleで買える彼の作品を、ご本人に直撃インタビューをしながらご紹介していきます!

朝倉世界一

<プロフィール>
1965年東京都生まれ。マンガ家、イラストレーター。
アルバイト先の雑誌編集部でイラストを描き始めて、1988年に4コマまんがで漫画家デビュー。書籍カバーや雑誌、新聞コラムのイラストなども手がける。
代表作は『フラン県こわい城』『地獄のサラミちゃん』『デボネア・ドライブ』『春山町サーバンツ』など。
2015年12月から月刊「コミックビーム」で新連載『おれはたーさん』がスタート。

<Twitter>
https://twitter.com/askura1
<Facebook>
https://www.facebook.com/asakurasekaiichi

目次:

読後感は、夏休みの最後の日!『デボネア・ドライブ』

『デボネア・ドライブ』

<作品詳細>
元クラゲの人間・エチゼンくんと心優しき中年のオカマ・モモヤマさんは、三菱製の車“デボネア”を改造して移動入浴サービスの仕事していた。ある日エチゼンくんが起こした交通事故により、金庫破りの美女・マリちゃんに出会う。そして三人は痴呆症のヤクザ・元会長を老人ホームに送り届けるため、謎の追っ手とカーチェイスを繰り広げながら津軽を目指すのだが・・・。

――最初にご紹介いただける作品は『デボネア・ドライブ』です!

雑誌「コミックビーム」で読み切り漫画(「女社長の日々」「ターナーさんありがとう」等)を描いていたのですが、「次は連載どうですか?」と依頼を受けて始まったのが『デボネア・ドライブ』です。
編集者との打ち合わせで「海岸線を大きめの車でゆったり走っているところが描きたい!」と、言ったのがはじまり。果たしてこれが連載として続けられるのか分からなかったんですけど(笑)。

――設定とかテーマからではなく、「車が描きたい」という動機で!

いつもだいたい、そんな感じで漫画を描き進めるんです。設定とかはそのあと考えていって、「デボネアでただ運転しているだけじゃなくて仕事をしている」ことにしよう、とか。いつもなんとな~く、イメージを膨らませていく。「こういう人がいたら楽しいかもしれないな~、こういう友達がいたらないいな~」と思ってキャラクターも決めていきますし。
テーマというのをあまり深く考えるよりか、この漫画では「とにかく最終目的地は津軽!」って、なんか自分で決めちゃったんですよね(笑)。途中経過は、その都度決めていって。

――すごく執筆計画がユルい印象なのですが(笑)、筆が進まないというときはあるんですか?

もちろん、「ここからの展開どうしよう?」と思うことは常にありますけど、それもなんとな~く決まっていくんですよね。自分でも不思議なのですが・・・。

――それをうかがって、漫画どおりのお方だなと思いました! 楽しいシーンもたくさんあるし、ハラハラドキドキする場面もあって、ドライブなのか逃走なのか、よく分からなくなってくるのがこの作品の魅力でもありますよね。この漫画の気に入っている部分はなんですか?

この連載中はとにかく描いてみたいと思うシーンを沢山作品に投入したと記憶しています。
波乗りをしている絵、車が崖を走る絵、登場人物たちと自分が一緒に体験しているような感覚が強くあった気がします。いつもキャラクターが、この場所でこの状況になったら、どんな風に切り抜けたり、言ったりするかな~と思いながら描く感じ。

――あの名作を、そんなノリで描いていたなんて衝撃です!(笑) 見開きで、車や波がドカーン! 大きく描かれていて気持ちいいし、ラストが「夏休み最後の日」みたいな、なんとも言えない切なさを味わえる凄い作品ですね!

『デボネア・ドライブ』
『デボネア・ドライブ』
エチゼンくんとモモヤマさんは、移動入浴サービスの仕事している

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女性誌に連載して大人気!『地獄のサラミちゃん』

『地獄のサラミちゃん』

<作品詳細>
パパはえんま大王! 地上生活にあこがれて地獄を飛び出してきたサラミちゃん。ぴょん子・プラムちゃん・ビリーくん・ゴクジなど・・・・愉快な仲間たちと過ごす毎日は珍騒動の連続! アルバイトや恋だってしちゃうし、生き別れたママも登場!? 地獄のプリンセス・サラミちゃんのおしゃれでキュートな大冒険!

――1998年にファッション雑誌『CUTiE』から派生する形で創刊された『CUTiE Comic(キューティ・コミック)』というのがあって、そこで連載されていたのが『地獄のサラミちゃん』ですが・・・

その『CUTiE Comic』の創刊準備号で作品募集をしていたんですよ。安野モヨコさんとか、桜沢エリカさんとか、カリスマといわれている漫画家さんの連載が始まるよ、という号で。他媒体でやっていた自分の連載も終わりちょうどヒマだったので、簡単なラフを描いて編集部に持ち込んだのが、サラミちゃんなんです。
サラミちゃんは、「このシーンが描きたい」ではなく、キャラクター設定からまず始めました。
「地獄から地上に憧れてやってくる女の子」からどんどんイメージを膨らませて・・・。『CUTiE Comic』の読者はおしゃれ好きな人ばかりなので、サラミちゃんの設定は、地獄のお姫さまだけど、地上で、ステーキ屋でバイトをしながらモデルを目指しているという子にしました。
でも、なんで地獄からきた設定にしたのかは、もう思い出せない・・・(笑)。

『地獄のサラミちゃん』
『地獄のサラミちゃん』
地獄から地上へ、モデルを目指してやってきたサラミちゃん

――サラミちゃんの執筆時、思い出に残っていることってありますか?

自分自身も女性ファッション誌を読んだりして、流行をチェックしたりしながら、「サラミちゃんには今度こんな風な格好させようかな~」と考えて描いていたのが印象に残っています。

――1998年にスタートした「サラミちゃん」ですが、2011年に刊行された吉本ばななさんの小説『ジュージュー』の冒頭で出てきますね。主人公の亡くなったお母さんが『地獄のサラミちゃん』が好きすぎて、漫画を仏壇にお供えしているシーン

この小説のなかで、『地獄のサラミちゃん』の本が大切な存在として登場
この小説のなかで、『地獄のサラミちゃん』の本が大切な存在として登場

そうなんです。ばななさんから『サラミちゃん』が出てくる小説を書いているから、表紙に漫画の絵を使わせて貰えませんか? という依頼を受けまして・・・。「10年ぶりにサラミちゃんを描くので顔が違うかもしれませんが!」とお伝えして、装画を描き下ろしさせていただきました。
それから、2013年に刊行されたばななさんの小説『スナックちどり』の装画の依頼もいただき、それも描かせていただきました。

『スナックちどり』
装画を担当した『スナックちどり』

――『地獄のサラミちゃん』で、他に思い出に残っていることはありますか?

単行本化したとき、漫画のあとがきに「ジゴククラブ、クラブ部員募集!」というのを描いたんですよ。クラブと言っても、これといって何も活動しないんですけど(笑)。
読者の方に返信用封筒と切手を送ってもらうと、僕がインクジェットで印刷した「地獄新聞」を部員に送るんです。文通みたいな読者とのやりとりが、とても楽しかったです。

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渋谷区にある架空の町をほっこり描く、『春山町サーバンツ』

『春山町サーバンツ』

<作品詳細>
東京都渋谷区春山町。巻村鶴子は、区役所の春山町出張所の公務員として、新社会人の第一歩を踏み出しますが、いきなり任命されたのは、タウン情報誌『春山町サロン』の編集長!
慣れない仕事と不思議な街の人々に翻弄されながらも、取材を進めていく鶴子。そして、実は鶴子の父は『春山町サロン』で連載をしていた小説家だが、あることがきっかけで長年のスランプになってしまったのだが・・・。
ブルボン小林(コラムニスト)が選ぶ、第5回「宝島社の『このマンガがすごい!』で一票も入らなかった中から選ぶベスト漫画」を受賞するなど、なにかといろいろ反響をよぶ、朝倉ワールド満開の、東京ローカル・ロマン!

――では次、「春山町サーバンツ」です。こちらは“ご近所漫画”というキャッチコピーがついている作品ですが

そのキャッチコピーどおり、「近所にあるような商店街の漫画を描いてみたい」という動機で始まりました。春山町というのは架空の町ですが、実際には自分が長年住んでいた場所をベースに描いています。出てくるお店に関しては想像で描いている部分が大きいのですが、テナントがすぐ変わる店とかは実際のモデルとなっている場所があります!
これといって大きな事件も起きない、いつもよりもゆる~い漫画を描いたら楽しいかなと思って描きました。

『春山町サーバンツ』
春山町は、朝倉さんがつくった架空の町です!

――登場人物も多いし、スランプの小説家のお父さんはこれからどうなるのかな? 鶴子の恋の行方は? とハラハラする部分はありますが、本当にゆる~く展開していましたね(笑)

東京だけど東京とは思えない、のんびりした町に自分が住んでいたので必然的にこうなりました(笑)。近所の人たちの何気ない日常、それだけで漫画を描く! そういう気持ちで描いたので、『デボネア・ドライブ』のような冒険感はありません。

――『デボネア・ドライブ』のような次から次へと移動していく疾走感はないし、登場人物は町から出ないけどすごくいい作品ですよね。「渡る世間は鬼ばかり」のほのぼの版という感じで! 朝倉作品の中で、いちばん心がほぐれる漫画だと思います!

『春山町サーバンツ』
『春山町サーバンツ』
さて、鶴子の恋の行方は・・・!?

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短編作品集『月は何でも知っているかも』

『月は何でも知っているかも』

<作品詳細>
朝倉世界一の短編作品集! コミックビーム発表「ターナーさん ありがとう」など、掲載以来、多くの読者から刊行を待ち望まれていた名編の数々が、気持ちの良い空気に溢れた一冊にまとめられている。

――こちらの作品は、朝倉さんが描いてきた短編漫画を一冊に編集されているものですね

はい。冒頭の「女社長の日々」がコミックビームで初めての掲載作品で、いままでと違うことに挑戦しようとした作品です。とくに絵にこだわって、気持ちのいい世界が描きたいと思っていました。

短編『女社長の日々』
短編『女社長の日々』より

――描くテクニックに大きな発見があったと聞きましたが

つづく「ターナーさん ありがとう」では、オートバイの勢いをダイレクトに表現したくて原稿にペンを入れるのをやめ、鉛筆の線をそのまま仕上げに使いました。『デボネア・ドライブ』はこのときの描き方を生かしています。
このやり方が気に入って、現在ストーリー漫画はすべてこの描き方です。

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朝倉さんが影響を受けた漫画は? 新連載「おれは たーさん」とは?

――朝倉さんが、ご自身で影響を受けている漫画はなんですか?

Kindleでは販売されていないのですが、水木しげるさんの『河童の三平(ちくま文庫版)』と、ちばてつやさんの『おれは鉄兵』ですね。

『おれは鉄兵』

『おれは鉄兵』は剣道漫画で、自分自身も中学生当時、剣道部に所属していたのでとにかく熱中して読んでいた青春の漫画。自分の作風にはあまり影響を受けていないと思いますが、熱中して読んだという点で思い出深い作品です。

『河童の三平』

『河童の三平』は、屁道を極めた無臭老人という人が「屁隠れの術」や「屁コトバ」を操り、「屁リンピック」を開催するというエピソードが収録されていて、水木作品のなかで特別好きなんですよ。
自分が描いた『フラン県こわい城』という漫画のなかで、「ちんこくらぶ」というちんこに関するいろいろなクラブ活動する二人が出てきて、「ちんこリンピック」を開催したりします。モロに影響を受けていますね(笑)。

――水木さんのエッセンスがちゃんと漫画に入っていますね!(笑) ところで漫画家になったきっかけは何ですか?

工業デザインの専門学校を出た後、就職しないでしばらく何もしていなかったんです。ある時友達に「男性誌の編プロでバイト募集しているけど、やらない?」と誘われて行ってみたんですよ。
で、その友達が会社の人に「この人は学生時代、落書きばっかりしていました」って僕のことを紹介したんです。たしかに落書きは好きだったけど、自分が絵を描く仕事をするなんて思ったことなかったです。座談会用の似顔絵アイコンを描く仕事を任されてやってみたら「あ、描けるね~」と言われて、イラストをたまに描いたりすることになったんです。
それでも自分が漫画が描けるとは思っていなかったんですが、その編プロにギャグ漫画家の吉田戦車さんがよく遊びにいらしていて僕のイラストを見たときに、「漫画描いてみたらいいのに~」と言ってくださって。
そしたら編集部の人も僕に4コマ漫画用のページを割いてくれて描いてみたら、また「うん、いいんじゃない~」と言われて、「そうですか? それじゃ、もうちょっと描いてみようかな」と調子に乗って今までやってきたという感じです(笑)。

――デビューは4コマ作品だったんですね! 漫画家のなり方も、朝倉さんの作品同様ユルくて、すごいカッコいいです。ところで次回作は今なにか進んでいますか?

「月刊コミックビーム」で、『おれは たーさん』という連載が最近始まりました。

『おれは たーさん』
新連載がスタート!『おれは たーさん』

――こちらは、どんな作品ですか?

「街で普通に暮らす、太り気味のターザンもの」です!

――また、普通じゃ思いつかない素晴らしい設定です!(笑)

たーさんは、コンサルティングをする商社的な会社に勤めているんですけど、ジャングルの平和を守ってきた元・野生のヒーローで、船に乗り海を越えやってきて都会で仲間を見つけ、街での暮らしを始めるところから物語は始まっています。
一応ターザンものなので、アクション要素も入れています。太っている人が機敏に動いているのを描いてみたいというのもあって・・・(笑)。

――(笑)

勤めている会社が「バブリー商会」という名前で、他の従業員はサルとブタとカッパの3人。とりあえず第1回目は、ゴルフ場から「もっとお客さんを増やしてください」とコンサル依頼があったのに、4人は「とりあえずゴルフやるか!」って、ゴルフやって帰ってきちゃいました(笑)。

――その連載は、毎回目が離せませんね!(笑)

作者の自分もどんな展開をしていくのか、分かってません。果たして、たーさん、どうなっていくのでしょうか・・・?

――本日は、たのしいお話をありがとうございました!

(取材・執筆)勝俣利彦

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この記事を書いた人(編集:モバレコ編集部)

こんにちは、モバレコ編集部です。 2019年もあっという間に6月ですね。7月、8月の夏本番に向けて予定を立て始める方もいらっしゃるのではないでしょうか。 スマホ業界も次々と新作が登場する熱い時期。夏の思い出を美しく残すために、高性能カメラのスマートフォンに新調するのも良いですね!