デザインユニット「TENT」を取材!心地いいスマホ「NuAns NEO」が生まれるまで。

書いた人: モバレコ編集部

カテゴリ: インタビュー, レポート

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デザインユニット「TENT」を取材!心地いいスマホ「NuAns NEO」が生まれるまで。

こんにちは、モバレコ編集部です。
本日インタビューさせていただくのは、NuAns NEO(ニュアンスネオ)をデザインされた「TENT」のお二人。

格安SIMの普及とともに増えているスマートフォンの新機種ですが、正直言ってデザインに大きな差を感じることは少なくなってきました。そんな中で昨年末発表された時から、「センスあふれるスマホ」として注目を集めていたNuAns NEO。
シンプルだけど独創性を感じるスマートフォンを制作する過程で、お二人はどんなことを考えて、どんなところにこだわりを持たれたのでしょうか?

今回はそんな、「スマホのデザイン」に焦点を当てたお話です。

NuAns NEO

NuAns NEO

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<プロフィール>
TENT

2011年に治田将之と青木亮作の2人によって結成され活動を開始したクリエイティブユニット。
見て楽しく、触って嬉しく、使う程に愛着が湧くものづくりをテーマにテーブルウェア、家電、インテリア用品などのプロダクトデザインを行なっている。プロダクト開発を中心に据え商品企画、パッケージ、Web、アプリUI、展示空間プロデュースなど、コンセプトからのトータルなデザインを得意とし、2013年からは自社オリジナル商品の製造、販売も開始。

(WEB) TENT1000

目次:

家電と日用品のテイストがミックスされた理由

--まず最初に、スマホをデザインして欲しいというお話を頂いた時、どんなことを思いましたか?

治田  iPhoneアクセサリーシリーズの「NuAns」で、トリニティ株式会社の星川さんと1年間プロジェクトをご一緒させていただいたのですが、その次に展開したいものがスマホと打ち明けられた時、僕は単純に「面白そう」って思ったんです。とにかく星川さんが目をキラキラさせてお話されていて。でも横の青木を見たら結構表情が硬くて、「あれ?」って思ったのを覚えています(笑)。

青木  頭の中でいろんな考えがグルグル回っていたので(笑)。というのも、お話を頂いた時「Windows 10 Mobile」ということは決まっていて、手を加えられる領域はハードウェアのみに限られていることが分かっていた。一方、今ほとんどのスマホって、パッと見iPhoneのフォロワーにしか見えないじゃないですか。そういう状況で、ハードウェアの工夫だけで納得のいくデザインを作リ出すのは厳しそうだぞ・・・という気持ちが自分は先行したんです。

TENT interview

【左から】青木亮作さん、治田将之さん

--冷静に考えると簡単じゃないぞ、と。

青木  デザインを進めている間は、まだWindows 10 Mobileがリリースされていなかったので、僕たちも肝心なOSが本当にはどんなものなのかも分からずに作っていましたし。

--作ると決めた後は、どんな風に進行していったんですか?

青木  そのあと、トリニティさんと詳細打ち合わせがありました。そこでSIMフリー機のほとんどは背面カバーが外せる構造になっているのが主流と聞き、外す作りになるんだったらそこを逆手にとってカバーの着せ替えが楽しめる作りにしたいという提案をいただいたんです。そこから二人でいろいろアイディアを詰めていきました。

治田  アイディアを詰めていくなかで、「背面ケースの着せ替え」だけではよくある構成だなと思ったので2トーンカラーの着せ替えなら他にないデザインになるのではと思いました。コーディネートみたいに楽しむという切り口なら見たことないスマホになるんじゃないかな、と思ったんです。

NuAns NEO

「2トーンの着せ替え」というアイディアが浮かんだ

--70通り以上の組み合わせが楽しめるスマホというのは、他に見たことありません! でもスマホという通信機器のデザインで、戸惑うことは多かったのでは?

治田  TENTとして独立する前から家電製品のデザインをやってきているので、新しい分野の仕事をしているという感じはしなかったです。ただ製造という点では苦労することはもちろんありましたよ。

青木  僕も以前はカメラメーカーやAV機器メーカーで働いていて、パソコンやICレコーダー、デジカメなどのデザインをいろいろやってきたので戸惑いはなかったです。
TENT結成後は家電製品だけでなくテーブルウェアなどもデザインしてきました。家電よりも単純なデザインと思われがちですが、構造とか肉厚、樹脂の種類など深い領域に立ち入っていかないと作れません。テーブルウェアなどに関わらせていただいたことで、素材や構造に、より詳しくなることができ自分としてはとても良い修行にもなりました。

PLUG tea jug

「PLUG tea jug」
Display Cleaner

「Display Cleaner」

--なるほど。一度家電製品のデザインから離れて、日用品のデザイン経験をしたことによって、日常になじむNuAns NEOをデザインできたわけですね。

治田  両方の業界を経験して、バランスよく2つのテイストがミックスされたと思います。NuAns NEOだけでなく、バッテリーやケーブルなどNuAnsシリーズのデザインに関しても同じことが言えます。

いいデザインは、いいチームから生まれる

--素材だけでなくサイズ感についても深く考えられたと思いますが、どういう考えを反映していますか?

青木  業界全体がAppleの価値観に縛られていて、今はほとんどのスマホが薄さを追求していると思いますが、たとえば、バッテリーの容量に不満を持っている人って多いですよね。NuAns NEOではまずは薄さに固執せずに、バッテリーを大容量にしたり、ICカードを本体に内臓するなど、開発メンバーが本音で欲しい機能を盛り込むことから始めました。僕たちは、それらの機能を満たした上で最適なサイズに落とし込むために、エンジニアとはかなりやりとりを重ねました。

治田  実は、大きくて薄いものって持ちにくいんです。NuAns NEOは、サイドの丸みと厚さを何度も検証して持ちやすさを追求しました。この適度な丸みと厚さによって、正面の大きさ自体はiPhone6 Plusとそんなに変わらないのに、手にフィットしてとても持ちやすいんです。

--確かに新製品が出るたびにどんどん薄くなっていますね。では、デザイナーのお二人から見るiPhoneはどんな風に見えているんだろうと、気になるんですが・・・

治田  iPhoneが最初に発表されてからずっと見てきて、iPhone4が完成度という意味で一つの到達点だったかなと思っています。また、現在販売されている画面サイズがiPhone6、iPhone6plus、iPhoneSEと3種類もあったり、iPhone6sのシリーズとiPhone6のシリーズを併売している点などラインナップの多さが気になりますね。
MacBookやiMacのように、一度到達点に達した製品はずっとデザインも変えず、画面サイズを含めてラインナップも整理されているように思います。そういう意味では、iPhoneはラインナップがまだ整理されていない感じがしています。

青木  僕も「iPhone4が“目で見たデザイン”としては究極」だと思っています。理想に向かってすごくミニマムにまとめられている。例えばiPhone4はボディーの角と背面レンズのRが合っているんですが、5以降はそれがズレています。ささいなことですが、そういう妥協が使用時にノイズになるんです。僕はiPhone4を使っていた時はこういったディティールをよくジロジロ眺めていましたよ、あまりに視覚的な完成度が高いので見ていて気持ちよくて(笑)。
こういうプロダクトというのは、会社内のデザインや設計、セールスなど様々な部門や人がいいバランス関係じゃないと生まれません。どちらかが上で、どちらかが下ということになると整合性がなかったり、機能的じゃなかったりすることが出てきます。ものづくりの喜びとビジネスとしての成立が見事に融合していて、iPhone4を作った人たちには本当に尊敬の念を持っています。

iPhone

iPhone5以降、ボディーとカメラのRにズレが生じている

--NuAns NEOのデザインに関しては、設計とデザインの葛藤はありましたか?

青木  もちろん葛藤はありましたが、大手にありがちな「とは言え営業がこう言っているから変更してくれ」とかそういう偏ったパワーバランスはなかったので、「こうしたい」「いやそれは厳しい」「じゃあこうしましょうか?」と、お互いが最善を提案し合う関係でNuAns NEOは作られてきました。

--理想のスマホに向かって、チームが一丸と動いていたんですね。ではユーザーに向けてどんなこと思いながら、デザインしていました?

青木  NuAnsシリーズでも言っていることなんですが、「まるでインテリアアイテムを選ぶようにモバイルアイテムを手に取れたら」、これが僕たちの提案です。その延長線上にNuAns NEOもあります。だから家電量販店に並べるとちょっと異質なデザインに見えるかもしれません。テーブルウェアなどに関わった影響だとは思いますが、これまでの家電デザインはいかに視野が狭かったかということが最近改めて思います。
よく「変わったデザインを考えましたね」と言われたりもするんですが、僕からするとこれまでより一般的に開かれたデザインを作り出したつもりです。だからトリニティさんも家電量販店よりもインテリアショップなどで販売した方が今までのガジェット好きの方だけでなく、より開かれたユーザーとの接点が多いと判断しているようです。

視覚的な美しさだけでなく、触覚を考えるのもデザイン

--例えばこの「BANDWIRE」も、他にはない形のケーブルですよね。どうしてこの形にしようと思ったのですか?

治田  自分たちが使っていて、不満や疑問に思う部分を改善していったらどうなるんだろうというところから考え始めていると思います。「BANDWIRE」に関して言えば、Ligthningケーブルってこんなに長さがないとダメなものなのか? というところから始めました。長いと便利という時もあるかもしれませんが、鞄の中で絡まったりすることもあるので携帯する時はもっと短い方がいいじゃないかなと。また純正のLigthningケーブルって断線して使えなくなることも多々あるので、断線しにくい作りにもなっています。

BANDWIRE

BANDWIRE

--確かに「コードってこういうもの」という思い込みがみんなにあると思います。この思い込みに気づくってなかなか難しいことです・・・。
スマホのデザインってどうしても似通ってしまうので、なかなか見た目を覚えられませんが、NuAns NEOは一回見ただけで強く記憶に残りました。

青木  そこはかなり頑張ってデザイン構築しました。「正面真っ黒の板で四つ角R」というAppleが発明したデザインに、角Rの大きさを少し変化させたり、ボディに装飾部品を追加したりとか、そういうデザインが他社には多い気がします。自分たちは余計なデザインを足してAppleと違う個性を出そうという発想はしたくなかったので、シンプルだけど似ていないものを目指して作りました。

TENT interview

--あと、NuAns NEOは、「気持ち良さそう」という印象もあったんです。スマホを見てなぜ気持ち良さそうと思ったのか、自分でもよく分からないんですが・・・

治田  サイズ感や丸みのせいかもしれませんが、やはり背面ケースが「気持ち良さそう」という印象を与えているかと思います。天然木や、スウェード、ランドセルに使われるクラリーノという人工皮革など触って気持ちいい素材を背面ケースに選んでいるので。
でも背面ケースの特殊な生地を樹脂に一体成形するのがすごく難しくて、何度も調整を重ねました。一番苦労した工程だと思います。

青木  さきほど絶賛したiPhone4は、視覚的には「究極の形」だと思いますが、触覚的には究極の域に行っていない気がしていました。手に持った時の感触がカクカクしていたり、自分にはちょっとしっくりこなくて。なので、NuAns NEOは視覚と触覚、両方のアプローチをしたかったんです。

--天然木やスウェードをスマホに馴染むように使うという試みは一筋縄でいかなかったんですね。私は「デザイン=見た目を考える作業」だけだと思っていました。ところで、お二人で意見が割れる時はありますか?

治田  もちろん、あります。すべてのプロジェクトにおいて、お互い対等にアイディアを出し合うので。たとえば昨日、僕が彼のアイディアを「すごい良い」と言ったのに本人は「そうですかね~」と納得していなかった。でも次の日「やっぱりあれは欠点が多いかも・・・」と僕が考えが変わって指摘すると、彼も昨日と意見が変わっているとか(笑)。

青木  そういう意見のクロス、よくありますね(笑)。意見対立はそれほどないんですが、今日の意見と明日の意見がそれぞれ変化していることが多いです。

TENT interview

治田  アイディアの良し悪しって、それぐらい自由なことだと思うんですよ。二人で多角的に検証を重ねていかないと、会ったことがない人まで感動させるものづくりはできないと思っていて。

青木  ディスカッションをおろそかにしたら、いいものは生まれないですね。僕たちのデザインのプロセスは「美しさを目指したい」よりも「実現したいことの為にノイズになる要素を見つけて1つ1つ取り除いている」という感じがします。

世の中であたりまえに思われていて、実は必要のないものを引き算

--では、ものづくりで一番やりがいを感じるときは、どんなときですか?

青木  NuAnsシリーズのCONEを作ったのは、トリニティの星川さんから「スマホの充電ができて、スピーカーで音楽が聴けて、時計も照明もついている製品を作って欲しい」というオーダーを頂いて始まったんですね。その製品を想像したとき「自分は全然欲しくない・・・」って最初思って苦しんだんです(笑)。

TENT interview

「これではユーザーが喜ばない」と思った

青木  でも自分なりに考え抜いて「下にあるスピーカーを上に置いたらいいんじゃないか」と閃いて。オーダー最初の段階ではひどい失敗作しか浮かんでこなかったんですが、それはハードルが高いだけであって、それを乗り越えた時にいいものが生まれるんだということを学びました。こういう製品ができた時に、自分は仕事のやりがいを感じます。なかなか簡単にはいかないんですが(笑)。

NuAns NEO:傘の部分にスピーカーを搭載した「CONE」

傘の部分にスピーカーを搭載した「CONE」

--とてもスッキリしたデザインになりましたね! 視覚的なデザインでは課題をクリアしたと思いますが、スピーカーの響き方はどうなんですか?

青木  その点もクリアしています。照明の傘部分に大口径大容量のスピーカーが搭載できたので、高品質な音が楽しめる作りになっています。

NuAns NEO大口径大容量の高音質スピーカー

大口径大容量の高音質スピーカー

--このお話を聞いて改めて製品を見ると、形になるまでの大変さと、喜びがどの製品にもあるんだと、デザインの奥深さを感じます・・・。
では、最後になりますが、TENTがこれから製品化してみたいプロダクトがありましたら教えてください。

治田  ずっと家電製品のプロダクトが多くて、手のひらに収まるとか、持ち運べるとか、そういうサイズ感のものが多かったので、今度は椅子やテーブルといった大きいもののデザインに挑戦してみたいという気があります。
あと、最近自分の子どもが補助輪なしの自転車に乗れるようになったんですが、そこで発見がありました。これまでは、三輪車に乗って、補助輪付きの自転車に乗って、特訓して補助輪なしの自転車に乗れるようなるという成長過程しかないと思い込んでいたのですが、「ストライダー」というペダルがなくて蹴って進む自転車でバランス感覚を鍛えておくと、特訓が必要ないくらいスムーズに補助輪なし運転が習得できるんですよ。
「三輪車→補助輪あり→補助輪なし」から「ストライダー→補助輪なし自転車」へと、一つの無駄が省けたんですね。世の中には、他にもこういった気づいていない無駄がたくさんあるんじゃないかと、昨日も青木と話していたんです。

青木  補助輪も、元々は子どもに役立てたいと思って作られたのだ思いますが、結果的に習得の妨げになっていたんだと・・・。自分たちが目指す「引き算」というのは、形をシンプルにするという意味ではなく、このストライダーのように不必要な仕組みや考えを削ぎ落としていくことで、本来あるべき姿を見つけることなんだなと再認識しました。必要だと思い込んでいたけど実は無駄がある製品を見つけたら、これからも自分たちなりに、新しいけれど実は本質的な回答を提案していきたいです。

TENT interview

(取材・文/勝俣利彦)

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この記事を書いた人(編集:モバレコ編集部)

8月はトルクの季節。いくら頑丈でもスイカ割りしちゃだめよ。