全スマホユーザー必見!なぜスマホのガラスはよく割れているのか・・・!?

相変わらず、スマホの画面にひびが入ったまま使っている人をよく見かける。この原稿を書いている前の日も、僕の同僚がiPhone 6 Plusのガラスを割った。「タクシーから降りるときにちょっと落としただけなのに……」と、とても悲しんでいた。

しかし、スマホが登場する度にガラスの強度は上がっている。にもかかわらず、相変わらず割れている様子をよく見かけるのはいったいなぜなんだろうか?

今回は耐久性に優れたガラスの代名詞とも言える「Corning® Gorilla® Glass」で有名なコーニング社に取材を申し込み、なぜスマホのガラスが割れるのか? その理由を聞くため突撃インタビューを敢行してきた。

結論から言うと、「スマホを落とした際に傷ができると、次回落としたときに急激に割れやすくなる」そうなのだ。

なぜ硬いガラスが割れるのか

まずは、素朴な疑問を尋ねてみた。

「スマホには、新モデルごとに強いガラスが採用されているわけですが、街中では、以前にも増してひび割れたガラスのスマホを使っている人を見かけます。本当に強くなってるんですか?」と、少々失礼を承知でだ。

Corning Gorilla Glassの技術を担当する進藤氏は、「実際にどの位のスマホが割れているかといったデータは機密事項なので話はできませんが、確かに割れている印象はあります。なんとかしたいと思っているのですが……」とにこやかな表情をくずさずに、詳しい説明を続けてくれた。

コーニングジャパン株式会社 コーニンググラステクノロジーエンジニアリングアソシエイト 進藤克彦氏
コーニングジャパン株式会社 コーニンググラステクノロジーエンジニアリングアソシエイト 進藤克彦氏

そもそも、Corning Gorilla Glassは新製品が登場するごとに耐傷性・耐久性が増しているのだが、スマホ自体がどんどん進化し、薄型化や新しいデザイン、タッチシステムが導入され、同時にガラスも薄くなっていき、カバーガラスへの強度負担が高くなっているという。初代のCorning Gorilla Glassが登場した頃のスマホは、1ミリ前後のガラス厚が主流だったが、今は0.4ミリのカバーガラスも採用されている。つまり、強いから薄くできているわけだが、当然、薄くなると割れやすいというジレンマを抱えている。

さらに、スマホを格好良く設計するために、ベゼルが細くなりまた、画面サイズも大きくなっている。昔はガラスよりベゼルが厚い製品が多かったが、いまはガラス面がむき出しでカドを丸めるなどしている。つまり、直接ぶつかりやすくなっているのだ。スマホの設計自体が、非常にシビアになっているわけだ。逆に言うなら、強いガラスが登場したからこそ、そんな設計ができたわけだ。

スマホのガラスは2度以上落とすと割れる!?

それでも、実はスマホのガラスは簡単に割れないという。おそらく、普通にぶつけた程度で割れることはまずないのだ。
ただし、一定の条件を満たすと割れやすくなる。それは、だ。

例えば、木の板を曲げてもなかなか割れないが、のこぎりで切れ目を入れておくと簡単に割れる。ガラスも似たようなもので、表面に傷があると割れやすくなる。

固いと思えるガラスでも、傷はつく。金属にこすれるなどして、目に見えない傷が結構付いているそうだ。
最も危険なのが、落とすこと。最初に落として割れなくても、ガラスには目に見えない傷やひびが入っている。その上でもう一度落とすと――簡単に割れてしまうわけだ。

落下先の床が固くても割れやすいとは限らない。大理石などのツルツルの床では割れる可能性が少なく、凹凸のあるアスファルトやコンクリートの方が危険だそうだ。

ケースに入れた方が割れる可能性は低くなるし、表面にフィルムを貼り付けると傷を軽減する効果が多少は見込める。ただし、最良の策は落とさないことだが……。

ガラスの断面にひびが入っている、比較写真

以下の写真をみてほしい。以下の写真は他の化学強化のカバーガラスと「Corning Gorilla Glass 3」との強度を比較したものだが、一見同じようなガラスに見えても、強度に大きな違いがあるのだ。

傷に対しての強度比較(他の化学強化のカバーガラスとCorning Gorilla Glass 3)

他の化学強化されたカバーガラスは、横割れが発生
他の化学強化されたカバーガラスは、横割れが発生
Corning Gorilla Glass 3は高密度化により、外部からの力を吸収し横割れなし
Corning Gorilla Glass 3は高密度化により、外部からの力を吸収し横割れなし

耐傷性・耐久性に優れたCorning Gorilla Glass

このようなガラスの性質を考えて、最新のCorning Gorilla Glass 4では、表面に傷が付いても割れにくい構造を採用しているという。前モデルのCorning Gorilla Glass 3と比較しても落下の高さが最大で倍は強くなっているそうだ。もっとも、ガラスの強さの説明は非常に難しく、書いてもわかりづらいので割愛するが……。

「どうぞ、実際にテストしてみてください」と、石原修氏(コーニングインターナショナル株式会社 材料事業部 Corning Gorilla Glass 日本地区担当セールスマネージャー)。
僕の目の前には、3センチ角程度の小さなガラス板が2枚置かれ、横に金属の棒が並んでいる。1枚は「化学強化された青板ガラス」という、普通の窓などに使われているものを化学強化したガラスだ。もう一枚はCorning Gorilla Glassだ。どちらのガラスも、裏側にサンドブラストで傷が付けられている。サンドブラストとは、砂を吹き付ける機械で、要するにヤスリでこすったような均一な傷が付けられているのだ。

2種類のガラスを割ってみるテストにチャレンジ。ガラス片が飛び散ると危険なので、ビニールに入っている。
2種類のガラスを割ってみるテストにチャレンジ。ガラス片が飛び散ると危険なので、ビニールに入っている。

まずは、化学強化された青板ガラスを押してみたが、思ったより簡単には割れない。ちょっと体重を掛けて押し込むと、バキッという音と共に割れた。

続いて、Corning Gorilla Glassだ。今度は、まったく割れない。全力を掛けて押してもびくともしない。「いや、そんなんじゃなくて」と、石原氏は金属棒を握りしめると、ガンガンたたきつける。それでも、まったく割れる気配がない。というか、体格の良いオジサン(1人は僕)が汗をかきながら叩いてもびくともしないのだ。

化学強化された青板ガラスはちょっと力を入れると割れた。
化学強化された青板ガラスはちょっと力を入れると割れた。
Corning Gorilla Glassはガンガン叩いても割れない。傷が付いているのは表面のビニールだ。
Corning Gorilla Glassはガンガン叩いても割れない。傷が付いているのは表面のビニールだ。

確かに、傷が付いても割れにくくなっていることがよくわかる実験だが、最新のスマホは、またガラスが薄くなっていく。

割らないためには、当たり前だが落とさないことがマストだ。1度落として割れなくても「ラッキー。このスマホは割れないんだ!」と思ってはダメ。液晶を覆えるフタの付いたケースなどに入れよう。1度目の落下は、危険信号の可能性が大なのだから。

この記事の編集者

モバレコ編集者:シーモ

モバレコ編集者:シーモ

格安SIM・スマホジャンルを3年以上担当。
モバレコ編集部に着任後、ドコモ→ahamo→mineoに乗り換えるなどフットワークが自慢。
実際に選ぶ・乗り換える経験で得た目線を大事にしています。
良い所はもちろん悪い面もわかる、読んでいて納得感のある記事作りを心がけています。
推しはmineoとIIJmio。

この記事を書いた人(編集:モバレコ編集部)

戸田覚

戸田覚

キャリア25年以上、著書150冊を超えるビジネス・IT系の書作家。毎月40本以上の連載を担当している。株式会社アバンギャルド、戸田覚事務所代表取締役。

Let's Share!

  • Twitter シェアアイコン
  • facebook シェアアイコン
  • はてなブックマーク シェアアイコン
  • Pocket シェアアイコン