Xperia 1 V レビュー|熱問題が解消された待望のハイエンドXperia
2023年上半期のスマートフォン業界もさまざまなトピックがありました。
日本市場で最も印象的だったのはガラケーから長きに渡って携帯端末を開発してきた富士通の流れを継ぐFCNT、そして参入を発表してからスマホ1台しか世に送り出せずバルミューダが端末事業から撤退し、京セラもTORQUEを残してコンシューマー向けの事業から撤退を発表するなど事業を大幅に縮小したことです。
iPhoneで圧倒的な人気を誇るApple、日本を超優遇して魅力的なコストパフォーマンスで攻めるGoogle、OSを開発するGoogleを上回るほどの長期的なアップデートを提供するなど信頼できるSamsungといった海外メーカーに押されて「日本メーカーは全滅してしまうのではないか?」と同時に、「残る日本メーカーには、なんとか踏ん張ってほしい」と思うなかでソニーから「Xperia 1 V」が発売されました。
昨年のXperia 1 Vは19万円前後という高額でありながら熱問題が酷く、モバレコでレビューしたときも記事の締めとして来年まで待つという選択肢も考えようと書いたほど。
今年もあのレベルのものが出てきていれば、多くのXperiaファンが離れた可能性もあったと思いますが、今年のデキはかなり良いです。
端末名 | Xperia 1 V |
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販売キャリア |
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機種代金 |
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実質負担金 |
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発売日 | 2022年6月3日 |
※この記事はすべて税込表記です。
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目次:
Xperia 1 Vの外観・デザインレビュー
Xperia 1 Vのデザインはこれまでと大きく変わっていません。片手でしっかり握れる横幅がスリムな縦長でフラットな4辺で囲まれたボックス型を継続して採用しています。
今作では新たに側面に線状のローレット加工が施されています。おそらくグリップ力の向上を狙ったものでしょう。
今こうやってレビューを書いていて、途中で考え事をしているときに指を滑らせることはできますが、グリップ力や持ちやすさの向上につながるとは思えません。
側面に配置されている電源ボタンと音量ボタンは加工なし。
シャッターボタンには同じローレット加工が施されていますが、こちらは交差状になっていて手探りでもすぐにボタンの位置がわかります。
これまでのXperiaは背面にツルツルしたガラスを採用していましたが、独自開発のきめ細やかなテクスチャーを施したフロスト強化ガラスが採用されています。
触れた感覚は「これガラス?プラスチックじゃなくて?」というもの。爪でトントンと軽く叩いた感触もプラスチックとしか思えません。
これも側面のローレット加工と同じでどれほどグリップ力に効果があるのかはわかりません。それよりも他のスマートフォンとは違う感触が楽しいと感じました。
総じて見た目は美しいです。
上下のベゼル幅を薄くして統一したXperia 1 IIIで大きく改善されたデザイン性をそのままに触れたときの楽しさがプラスされた感覚。
特に素晴らしいのは背面のカメラ。
最近のスマートフォンは2-3個のカメラレンズが背面から飛び出した見た目の良くないものが多く、レンズの周辺にホコリが溜まってしまうものがほとんど。
Xperia 1 Vではすべてのレンズが小さなスペースに縦一列でフラットに並びます。
唯一の欠点はレンズとユニットの間にホコリが挟まってしまうこと。カメラに影響がないのなか気になるところです。
カラーはブラック、プラチナシルバー、カーキグリーンの3色です。
ただし、Xperiaファンから人気のある特徴的なカラーであるカーキグリーンはソニーオンラインショップ限定。
キャリアからは無難な選択肢となるブラックとプラチナシルバーしか購入できません。
今作になって3色から2色に減ってしまったのは残念です。
Xperia 1 Vのスペック詳細・パフォーマンスレビュー
Xperia 1 V | |
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OS | Android 13 |
プロセッサ | Snapdragon 8 Gen 2 |
ディスプレイ | 6.5インチ 縦横比21:9のシネマワイド 4K HDR有機EL リフレッシュレート120Hz アスペクト比 21:9 Gorilla Glass Victus 2 |
メモリ | 12GB |
ストレージ | 256GB – キャリア版 512GB – ソニーストア版 |
メインカメラ | トリプルカメラ 48MP 広角レンズ 12MP 超広角レンズ 12MP 望遠レンズ 3.5〜5.2倍光学ズーム ZEISS T*コーティング |
フロントカメラ | 12MP |
バッテリー | 5,000mAh |
サイズ | 165x 71 x 8.3 mm |
重さ | 約187g |
microSD | 最大1TB |
eSIM | ◯ |
チップセットは2023年夏発売のハイエンドスマートフォンが多く採用する「Snapdragon 8 Gen 2」を搭載。メモリは前作と同じ12GBです。
CPUの性能を数値化するベンチマークをGeekbench 5で計測したところ、シングルコアは平均1353、マルチコアは平均4393を記録。
前作のXperia 1 IVに比べると、それぞれ23%アップ、45%アップです。
将来的に複数回のOSアップデートや機能追加が行われても快適に使えるはずです。
シングルコア | マルチコア | |
---|---|---|
1回目 | 1465 | 4830 |
2回目 | 1345 | 4125 |
3回目 | 1249 | 4225 |
平均 | 1353 | 4393 |
外敵なゲーミング体験に大きく関わる描画性能を3D Markで計測したところ、瞬発的な性能では前作に比べて1.5倍アップと大幅に向上しています。
Wild Life | Wild Life Extreme | |
---|---|---|
1回目 | Maxed Out | 3555 |
2回目 | Maxed Out | 3555 |
3回目 | Maxed Out | 3493 |
平均 | Maxed Out | 3534 |
次は大幅な改善に期待したい対発熱性能をチェックしてみます。
最近発売されたスマートフォンで言えば、瞬発的な性能はミドルレンジでもまったく問題ないレベルです。
一方、長時間プレイしたときの発熱および発熱による性能低下などには大きな課題があり、前作のXperia 1 IVの最も大きな問題でもありました。
長時間の負荷を与えたときのパフォーマンスを計測したところXperia 1 IVと温度上昇や性能低下、バッテリーの増減は変わらないものの、最大および最初の性能は1.5倍に向上。
これだけの性能であればフルアクセルを踏まなくても快適に操作できるはず。アクセルを緩めながら高いパフォーマンスを発揮しつつ熱問題も回避できます。
これらはあくまでもベンチマーク上だけでものですが、最も重要な実際の体験も大幅に改善されています。
※横にスクロールできます。
ベスト | ロー | 性能低下 | バッテリー減少 | 温度上昇 | FPS | |
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1回目 | 3672 | 1528 | 41.6% | -7% | 35℃→46℃ +11℃ |
3→26fps |
2回目 | 3695 | 1951 | 52.8% | -9% | 36℃→46℃ +10℃ |
3→27fps |
3回目 | 3652 | 1821 | 49.9% | -9% | 33℃→46℃ +13℃ |
3→26fps |
平均 | 3673 | 1766 | 48.1% | -8.3% | +11.3℃ | 3→23.3fps |
電池持ちはXperia 1 IVから変わらずXperia 1 Vも優秀です。
電池持ちとカメラを検証するために、いつもどおり画面の明るさをマックスに固定し、リフレッシュレート120Hzをオンにして13時に外出。
次に充電するまでの間に10分間YouTubeで動画視聴、15分間のKeepメモを使ったレビューの下書き、約500枚以上のカメラ撮影を行い、外出の間にGoogleマップを使った乗り換え、ルート案内を多用したところ、7時間後に残量が10%になりました。
日常生活ではもちろん、旅行で使用するときでもコンパクトなモバイルバッテリーを携帯していれば電池持ちに困ることはないはず。
なお、Xperia 1 Vの5000mAhバッテリーは急速充電であれば90分程度でフル充電になります。
Xperia 1 Vのカメラ性能レビュー
Xperia 1 Vのカメラスペックは以下のとおりです。
※横にスクロールできます。
レンズ | 広角 | 超広角 | 望遠 |
画素数 | 12MP | 12MP | 12MP |
イメージセンサー | Exmor T for mobile | Exmor RS for mobile sensor | Exmor RS for mobile sensor |
センサーサイズ | 1/1.35インチ | 1/2.5インチ | 1/3.5インチ |
F値 | ƒ/1.9 | ƒ/2.2 | ƒ/2.3-2.8 |
焦点距離 | 24mm | 16mm | 85-125mm |
光学手ブレ補正 | ◯ | X | ◯ |
カメラ機能 | |||
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写真機能 |
|
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動画機能 |
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最も大きく進化したのは最も利用機会の多い広角レンズで世界初の2層トランジスタ画素積層型イメージセンサーを搭載。
構造の進化に加えてイメージセンサーが1.7倍も大きくなったことで光の取り込み量が増えて、ノイズを効果的に抑えることが可能に。ソニーいわく低照度性能は約2倍に向上しています。
画素数も12.2MPから約4倍の48MPにアップしました。
4つの画素を1つに束ねるピクセルビニングによってオートフォーカスも強化。
これまではAF性能の向上のために3D iToFセンサーを活用していましたが、強化されたAIも加わったことでセンサーは廃止に。それでもソニーの強みであるAF性能は退化していません。
Xperia 1 Vで撮影した写真を以下に並べておきます。すべてベーシックモードで設定値を変更せずに撮影しています。
Xperiaは写真だけでなく動画にも力を入れており、瞳AFをキャンセルすることで見せたい商品にピントを合わせられる「商品レビュー」モードや、カラーグレーディングしなくても肌の色味や質感を編集不要で綺麗に描写する「S-Cinetone for mobile」、屋外でも正面にいる被写体の声をクリアに録音できる「声優先マイク」、YouTubeのチャットを確認しながらライブ配信できる動画機能も充実しています。
Xperia 1 VとXperia 1 IVを比較
Xperia 1 Vがどれぐらい進化したのか昨年発売されたXperia 1 IVのスペックを以下にまとめます。
Xperia 1 V | Xperia 1 IV | |
---|---|---|
プロセッサ | Snapdragon 8 Gen 2 | Snapdragon 8 Gen 1 |
強化ガラス | Corning Gorilla Glass Victus 2 | Corning Gorilla Glass Victus |
メインカメラ | Exmor T for mobile | Exmor RS for mobile sensor |
広角レンズ | 48MP *12MPへのピクセルビニング 絞り値 ƒ/1.9 1.7倍も大きくなったセンサー |
12.2MP 絞り値 ƒ/1.7 |
新しいチップセットによってCPUによる基本性能が向上し、ゲーム体験に関わるGPUも1.5倍にアップしています。
ディスプレイには最新の強化ガラス「Gorilla Glass Victus 2」を搭載。昨年50%も明るさが向上したディスプレイは今年の強い日差しでも快適に利用できました。
カメラは前章でも書いたように新しい構造で巨大化、高画素化した最新のカメラセンサー「Exmor T for mobile」を搭載。オートフォーカス性能を変えないまま3D iToFセンサーを廃止に。
高速連写もAF/AE追随は最高20コマ/秒から最高30コマ/秒にアップしたことで小さい子供やペットなど素早く動き回る被写体もブレの少ない写真が撮影できます。
Xperia 1 Vの使ってみて良かったポイント
Xperia 1 Vを使ってみて良かったポイントを3つご紹介します。
発熱が劇的に改善
今年のXperiaはこれにつきます。
昨年発売されたXperia 1 IVは瞬時に発熱してすぐに警告が表示され、カメラが強制終了したり、起動しないことがありました。
問題の根源はチップセットのSnapdragon 8 Gen 1にあったものの、他の機種にはないXperia独自の警告仕様とのコンボがかなりのストレスでした。
Xperia 1 Vではチップセットの改善に加えて、本体内で発生した熱を熱のないところへ逃がす熱拡散シートの体積が60%も大きくなったことで、発熱問題が劇的に改善されています。
Xperia 1 IVは、屋内ですらカメラを構えて数十枚撮影するとすぐにカメラが強制終了していましたが、Xperia 1 Vは猛暑日の屋外で同じようにカメラを構えても、一度もカメラが強制終了せず、発熱の警告も表示されませんでした。
熱に関する問題はほぼ解消されたと言っていいでしょう。
電池持ち
Xperia 1 Vはパフォーマンスを向上しながら熱問題を解消し、電池持ちも改善されています。
前作に比べてCPUの電力効率が40%向上し、カメラ動作時の消費電力も20%向上していると案内されていますが、それを実感できるほど電池持ちは優秀です。
在宅ワークがほとんどでWi-Fiの使用が多い筆者のような人であれば2日は持ちます。
寝る前に充電して朝でかけて夜帰ってくるような一般的な使い方でも余裕の電池持ちです。
カメラやナビを多用するような旅行でも、5000mAh程度のモバイルバッテリーをカバンに入れておけば安心です。
デザイン
あらゆるスマートフォンがベゼルレスxパンチホールを採用するなかで、Xperiaは一貫して上下に同じ幅のベゼルを残したデザインの採用を続けています。
縦持ちで動画やゲームをプレイするときでもすべての表示領域に欠けがないため、快適に視聴およびプレイが可能です。
変わらないボックス型のデザインですが、2つのローレット加工が施されたフレームと独自開発のきめ細やかなテクスチャーが施された背面のフロスト強化ガラスによってマンネリを打破。
長年のXperiaファンでも楽しめるデザインです。
Xperia 1 Vの使ってみてイマイチだったポイント
Xperia 1 Vを使ってみてイマイチだったポイントについてもご紹介します。
タッチバグ
初期不良なのか、ソフトウェアまたはハードウェアの不具合かわからないですが、ポケットから取り出したときにタッチパネルが暴走を起こして、画面に触れていないのにタッチ操作が発生するゴーストタッチに頻繁に遭遇しました。
この現象が発生すると再起動するしか解消する方法はありませんが、ゴーストタッチが止まらないので、電源ボタンを長押しして再起動のアイコンをタッチするのも難しい。
これは早急に改善してほしいところです。
カメラアプリのわかりにくさ
Xperia 1 Vには用途ごとに異なるカメラアプリが全部で3つ用意されています。
このなかで最も利用機会の多いアプリがPhotoProですが、他のスマホに比べるとかなり特殊です。
まずは全部で6つある写真の撮影モード。
一般的に撮影モードといえば、ポートレートモードやスローモーション、タイムラプスといったスマホによく見られるものを浮かべるはずですが、PhotoProではシャッタースピード優先やマニュアル露出、プログラムオートといったカメラ専用機によく見られるものが並びます。
これ自体は悪くありませんが、ポケットからスマホを取り出して今ある瞬間を記録したい多くの人にとっては、デフォルトのBASIC以外はほぼ必要ありません。
そしてBASICも、ポケットから取り出してサッと撮れるような作りになっていません。
例えば、背景をぼかしたポートレート撮影。
他のスマホなら画面をスライドして撮影モードを切り替えるだけですが、Xperiaでは背景ぼかしのアイコンをタップしたあとに、オンボタンを押してボケの量を調整する必要があります。
今のPhotoProを変化させる必要はありませんが、他のスマートフォンと同じように画面を左右にスライドするだけで、よく利用する撮影モードにカンタンに変更できるアプリを追加して欲しいところ。
アプリは3つから4つに増えますが、いらないものは消すだけです。
まとめ:最大の発熱問題を解消した待望のハイエンドXperia
昨年発売されたXperia 1 IVの評価は、19万円を出す価値が見出せないというものでした。
上質なデザイン、シリーズ最長クラスの電池持ち、屋外でも見やすいディスプレイ、望遠光学ズームに対応したカメラにその価値はあるものの、発熱問題と不安定な動作が台無しにしていました。
Xperia 1 Vは長期のOSアップデートとセキュリティアップデートの保証がないものの、最大の懸念である問題が解消されたことで、ようやく同価格帯のスマートフォンと肩を並べて比較する対象になったと評価できます。
Xperia 1 IVは寛容なXperiaファンだけのものでしたが、Xperia 1 Vはすべてのスマホユーザーにとっての選択肢になるモデルです。
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