格安SIMでSIMフリー端末に接続問題発生!? 速度が遅くなるのはなぜ!!? IIJmioの中の人たちに聞いてみた!

書いた人: 矢口和則

カテゴリ: インタビュー, レポート, 格安SIM

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格安SIMでSIMフリー端末に接続問題発生! 速度が遅くなるのはなぜ!! IIJmioの中の人たちに聞いてみた!

リーズナブルな価格設定で、日に日にユーザー数を増やしつつある格安SIM&SIMフリー端末。しかし、そのSIMフリー端末で格安SIMを使用した場合、接続に関する問題が発生しているとの情報を入手しました。

そこで、この問題について検証をしているという、株式会社インターネットイニシアティブ(以下IIJ)を取材して発生している不具合の原因や対処方法など、役立つ方法をいろいろと聞いてきました。

目次:

Android 5.0のSIMフリー端末で不具合が発生!?

SIMフリー端末で、通信に関する問題が起きているらしい。しかも特定の機種で発生しているという。情報を整理してみると、

  • Nexusシリーズなどのグローバル端末
  • Android 5.0または5.1(Lollipop)を搭載した端末

で起きることが多いという。また不具合の内容は、

  • ネットワークに接続するのに時間がかかる
  • 接続してもLTEではつながらず、3Gになってしまう

といったものになっている。

接続問題が確認された端末のひとつ、Android5.0搭載 「Nexus 6」

接続問題が確認された端末のひとつ、Android5.0搭載 「Nexus 6」

インターネットサービスプロバイダーの老舗、IIJがこの問題の検証を行っているというので、さっそく取材に伺ってみた。ご存じのとおりIIJは、「IIJmio」というブランド名でMVNOサービスも展開している電気通信事業大手だ。

東京・飯田橋にあるIIJに訪問した。このビルの中にIIJがある

東京・飯田橋にあるIIJに訪問した。このビルの中にIIJがある

SIMフリー端末の接続問題について説明してくれたのは、IIJのネットワーク本部 技術企画室 リードエンジニアの大内宗徳氏、担当課長の佐々木太志氏、そしてプロダクト本部 プロダクト推進部 企画業務課 リードエンジニアの堂前清隆氏の3名だ。

さっそくSIMフリー端末の接続問題について訪ねると、やはりユーザーからの問い合わせが増えているそうだ。

「Lollipopが普及し始めたのに合わせて、問題が拡大しているのではないかと思われる状況です。例えば5分ぐらい接続に時間を要するといった不具合ですね(大内氏)」

「不具合を起こしている端末も、技適(技術基準適合)はクリアしているので性能は大丈夫なのですが、実際に問題が起きているようですね(堂前氏)」

ネットワーク本部 技術企画室 リードエンジニアの大内氏

ネットワーク本部 技術企画室 リードエンジニアの大内氏

こういった状況を踏まえIIJでは、基地局と端末との接続状況を調べ、不具合の原因を探る検証を実施したという。

IIJが行った検証とは?実はMVNOで調査できる範囲はごくわずか

検証の具体的な内容を聞く前に、まず携帯がどのような行程を経てモバイルネットワークにつながっているか、大まかに説明してもらった。主に端末を起動させたときの流れだ。

「通信を行うために、実はかなりのシーケンス(手順)を経ています。まず端末から接続要求が来ると、ネットワーク側は端末内の『IMSI』と『IMEI』をチェックします。これはそれぞれ、ユーザーと端末を識別するためのIDのようなものです(大内)」

このチェックでは、例えば盗難された端末かどうか、といった判断も可能だという。またNTTドコモであれば、自社で販売した端末かどうかを確認しSPモードへの接続を許可するといった作業も行われている。

「その後さらに、SIMの認証やネットワークと端末間のやり取りの暗号化、APN(アクセスポイント名)のサーチ、接続情報の通知、位置情報の取得など、複数のシーケンスが必要となります(大内)」

基地局と端末の間では、さまざまな情報がやり取りされている

基地局と端末の間では、さまざまな情報がやり取りされている

こういったやり取りが、実は端末の電源を入れたあとに高速で行われているわけだ。しかも単に情報を伝達するだけではなく、“交渉(ネゴシエーション)”が行われているという。

「接続の仕組みは『3GPP』という国際的な標準化団体が規定していて、キャリアも設備メーカーも端末メーカーも、すべてそれに則っています。しかし実際にはバリエーションが多いんですね(佐々木)」

「従って実際には、『どの方式でつなぎますか』といった相談のようなことを端末と基地局が行っているんです。ネゴシエーションと呼ばれていますが、まさにお互いが通信できる方法などを提示して交渉するわけです。その結果、この方法ならマッチするので通信しましょう、ということになるんです(堂前)」

プロダクト本部 プロダクト推進部 企画業務課 リードエンジニアの堂前氏

プロダクト本部 プロダクト推進部 企画業務課 リードエンジニアの堂前氏

なお、こうしたやり取りは主にNTTドコモなどのキャリアの設備、つまりMNOと端末間で行われている。IIJなどのMVNOが行っているのは「実は最後のところだけなんです。このパスワードは通していいよ、といった部分ですね(堂前)」なのだそうだ。
従ってネゴシエーションの部分を含む接続に関する詳細は、MVNOにとっていわばブラックボックスとなる。

ブラックボックスではありますが、通信に問題があるというお客様からのお問い合わせがある以上、原因を追求しなければなりません。そこで我々が選んだ方法は、端末内のBasebandチップから制御情報を抽出し、接続シーケンスを調べるといったものでした(大内)」

検証の結果判明した不具合の原因と対処方法

「検証で判明したのは、APNサーチ(どのアクセスポイントが使えるか端末側が探すこと)の不審な挙動です。本来は初期設定時にのみ行われるものなのですが、問題が起きている端末では何度も繰り返されるんです(大内)」

この挙動が確認されるのは、電源や機内モードのオンオフのとき、Wi-Fiからモバイルネットワークへの切り替えるとき、そして移動などで基地局が変わるとき(ハンドオーバー)だそうだ。

「そのたびに数分の間、接続がされない状態になります。またつながってもLTEが使えなく3Gでしか接続できない、といった不具合が発生するんです(佐々木)」

ネットワーク本部 技術企画室 担当課長の佐々木氏

ネットワーク本部 技術企画室 担当課長の佐々木氏

この問題の対策としては、現在契約しているMVNO以外のAPN設定をすべて削除する、という方法が有効だそうだ。また、3Gにしか接続できなくなった場合は、機内モードのオンオフを行うといい。さらに一部の端末では3Gの接続でも不具合が発生しているのだが、その場合は、APNプロトコルを「IPv4/IPv6」ではなく「IPv4」にしておくと状況が改善する(ただし機種によっては削除/変更ができないものもある)。

解決策をまとめると以下のようになる。

  1. 現在契約しているMVNO以外のAPN設定をすべて削除する
  2. 3Gにしか接続できなくなった場合は機内モードのオンオフを行う
  3. APNプロトコルでは「IPv4」を選択する
SIMフリー端末のAPN設定の画面

SIMフリー端末のAPN設定の画面:契約しているもの以外のAPN設定は、すべて削除しよう
SIMフリー端末のAPNプロトコルの画面

SIMフリー端末のAPNプロトコルの画面:APNプロトコルを「IPv4/IPv6」ではなく「IPv4」にしよう

ただし前述したように、MVNOのIIJが詳細を把握できるのは、ネットワークの一部分だけ。対処方法はわかったものの根本的な解決方法は判明していない。

「先ほど話したように3GPPの規格にはバリエーションがあるので、さまざまな機器間で微妙なずれが起こる場合がある。すると不具合が起きてしまうわけですね。われわれMVNOとしては、不具合を解消できるところは解消し、無理なところは情報としてきちんと提示していく。そうやってユーザーの皆さんに、できるだけ迷惑がかからないようにしていきたいと考えています(堂前)」

通信速度が遅くなることについても聞いてみた

この機会に、日頃気になっていることについても質問をしてみた。それは時間帯や場所による通信速度の変化だ。お昼の時間に遅くなったり、混雑しているところでメールの受信がうまくいかなくなったりするのはどうしてだろう。

通信速度が遅くなる原因には、2つ理由があります。1つはMNOに起因するもの、もう1つはMVNOに起因するもの。それぞれボトルネックのポイントが違いますね。またエリアなど、ユーザー側への影響も異なります(堂前)」

まずMNOに起因する場合は、ボトルネックとなるのは基地局と端末の間。1つの基地局で使える電波の量は決まっているので、そこにアクセスが集中すると通信が遅くなってしまう。

1つの基地局にアクセスが集中すると通信が遅くなってしまう

1つの基地局にアクセスが集中すると通信が遅くなってしまう

「顕著なのは、金曜日の夜の新宿駅などですね。アンテナの電波容量が飽和してしまうんです。この状態になると、同じ回線を使っているMVNOも影響を受けます。ただし影響は局地的なもので、限られた地域や時間帯で速度低下が発生します(堂前)」

では、MVNOに起因する理由とは何だろう。

MNOとMVNOとの間の回線がボトルネックとなる状況ですね。ここが混雑すると速度が遅くなる。これはMVNOのみに影響するものでMNOのほうは速度低下が起きません。また局地的ではなく全国で発生してしまいます」

MVNOとMNO間の回線がボトルネックになる場合がある

MVNOとMNO間の回線がボトルネックになる場合がある

速度低下は、トラフィックのピークとなる朝の通勤時間、お昼休み、そして夕方から夜にかけて発生することが多いという。

「こういうピークのときに何が起きているかというと、混雑により発生するデータの『破棄』なんです。ただし、もちろん本当に削除するのではなく、しばらく待って送り直します。そこで破棄→再送という手間がかかってしまうので、速度が遅く感じられるわけです(大内)」

この問題の解決策は、簡単にいえばMVNOが設備投資を積極的に行って帯域を増やす、ということになる。ただし投資額が上がれば、それがユーザーに跳ね返り、利用料金が上がる可能性がある。低価格が魅力の格安SIMなので、この辺りはバランスが重要というわけだ。

「一定の設備の中で、ユーザーの皆さんに公平に、できるだけ快適に使って頂くための仕組みを考えることがMVNOにとっては重要です。ちなみにIIJでは『クーポン』というシステムを採用しており、プランに合わせて高速通信が可能な量を設定しています。単に通信量を制限するだけでなく、自分でクーポンをOFFにして通信速度を下げ、通信量を節約することもできるようにして、利便性をあげているのです(堂前)」

最後に今後の展望について聞いてみると、次のような言葉が返ってきた。

「IIJはこの事業を始めるに当たって、“自分たちが使いたいサービスを実現する”というところからスタートしました。いまではMVNOは4番目の選択肢として認知されています。これからもお客様などの声をどんどん取り込んで、進んだサービスや新しい通信サービスを提供していきたいです(佐々木)」

(左から)IIJの佐々木氏、堂前氏、大内氏

多くの情報をユーザーに提供しつつMVNOでもイニシアティブをとろうとしているIIJの取り組みに、今後も注目していきたい。

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この記事を書いた人(編集:モバレコ編集部)

エディトル所属の編集者。AndroidやiOSデバイス、そしてMacに関する雑誌の編集、執筆を中心に活動中。根っからのMacユーザーではあるが、スマホはAndroidが好き。